第4回 ゆすり

身に覚えのないことでも、ゆすりの類いには出会いたくない。身に覚えがあればなおさらだ

アル☆カンパニー第4回公演

10年以上前の話だ。僕はその時、彼女とコーヒーでも飲もうとどこにでもあるようなセルフサービスのカフェに入った。片足ののない男が、カフェの隅に座っていた。チラッと男を見た時、確か一瞬目があった。僕らがコーヒーを注文していると、杖をカツカツと鳴らして男が近づき「ここは私が払おう」と唐突に言った。僕らが呆気にとられていたので、店員は「お知り合いですか?」と聞いた。僕が「いいえ」と答え、片足の男に「結構ですんで」と、やんわり断りを入れると、男は「気にするな。黙っててやるから」と囁いた。気味が悪くなって、僕らはそのまま店を出た。
「身に覚えのないことでも、ゆすりの類いには出会いたくない。身に覚えがあればなおさらだ」
悪いことは大してしていないつもりだが、僕はまた、街角で片足の男に会うのではないかと、少しだけ怯えている。―――青木豪


SPACE雑遊

2008/9/23(火)日~28日(日)

川崎アートセンター アルテリオ小劇場

2008/9/30(火)

スタッフ・出演者

スタッフ
作・演出:青木豪
美術:田中敏江
舞台監督:筒井昭善
照明:相良浩司
照明オペレーター:河野優子
音響:藤田赤目
衣装:前田文子
宣伝美術:松吉太郎
宣伝写真:五十嵐和則
イラストレーション:東海林さだお
キャラクター:村上豊
協力:太田篤哉、楠原礼美子、望月印刷株式会社
制作:中野良恵
企画・製作:アル☆カンパニー
出演者
平田 満(アル☆カンパニー)
井上 加奈子(アル☆カンパニー)
大谷 亮介